ガムを噛みながら歩くと身体機能がアップする?

嘘のような話ですが「ガムを噛みながら歩くと、運動効果が高まる」という研究結果があります。これは早稲田大学スポーツ科学学術院と株式会社ロッテの共同研究で明らかになったのですが、なぜガムを噛むだけで運動効果が上がるのでしょうか?

ガムを噛むと何が起こるのか?

どうやらガムを噛む行為は、単なる嗜好品としての側面だけでなく、私たちの身体に様々な影響を与えているようです。

  • 脳への刺激: ガムを噛むと、脳への血流が増加し、脳が活性化されます。これにより、集中力や記憶力が高まる可能性が示唆されています。
  • 唾液分泌の促進: 唾液には、消化を助ける酵素が含まれており、口腔内の清掃作用もあります。ガムを噛むことで、唾液の分泌が促され、口内環境が改善されます。
  • 交感神経の活性化: ガムを噛むと、交感神経が活性化され、心拍数や血圧が上昇します。この状態は、運動時にも見られる反応であり、身体を活動状態に導く働きがあります。

ガムを噛みながら歩くことのメリット

前述のとおり、早稲田大学スポーツ科学学術院と株式会社ロッテの共同研究で、ガムを噛みながら歩くと、以下の効果が得られることが明らかになりました。

心拍数の増加

ガムを噛むことで、心拍数が約3%増加し、エネルギー消費量が増加します。

心拍数と運動リズムが同期する現象(心臓と運動器の同期))があり、ガムを噛むことで心拍数が上昇し、それが歩行の速度を高め、エネルギー消費が増加します。

歩行距離・速度の増加

特に40〜60代の男性で客観的な結果が見られ、噛むことに使われる咬合筋の強さが関わっていると考えられ、歩行距離や歩行速度が約3.5%増加することが確認されています。

エネルギー消費量の増加

ガムを噛みながら歩くことで、エネルギー消費量が約2.5%増加します。

研究では、20〜60代の男女46人にゲームを噛みながら・噛まずに15分間歩いても​​らった結果、噛みながらの歩行で全員の心拍数が増加し、歩行距離と速度が向上しました。特に40〜60代の男性で客観的な結果が見られ、噛むことに使われる咬合筋の強さが関わっていると考えられます。

以前から、安静時にガムを噛むと交感神経活動が増加し、心拍数とエネルギー消費が増えることは知られていましたが、歩行中に同様の効果があることがこの実験発表されました。

それぞれの知見

歯科医学:顎の筋肉とガム

ガムを噛む行為は、顎の筋肉、特に咬筋側頭筋を刺激し、これらを鍛える効果が期待できます。この効果は、以下の点でメリットをもたらします。

  • 顎の発達促進: 小さな子供から大人まで、顎の骨の発育を促し、顔の輪郭や歯並びの改善に繋がる可能性があります。
  • 咀嚼力の向上: 噛む力が強くなることで、食事をしっかりと噛み砕き、消化を助けます。
  • 顎関節症予防: 顎関節の動きをスムーズにし、顎関節症の発症リスクを減らす効果が期待できます。

心理学:ガムを噛むとストレスが軽減される理由

  • 脳への刺激: ガムを噛む行為は、脳の様々な部位を刺激します。特に、前頭前野という、意思決定や感情のコントロールを司る部位の活動が活発になることが分かっています。この活性化が、ストレスを感じている時の脳の過剰な活動を抑え、リラックス効果をもたらすと考えられています。
  • セロトニンの分泌促進: ガムを噛むことで、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が促進される可能性が指摘されています。セロトニンは、心の安定や幸福感に深く関わっている神経伝達物質です。
  • 自律神経のバランス調整: ガムを噛む行為は、交感神経と副交感神経という、自律神経のバランスを整える効果もあると考えられています。交感神経は活動時に優位になり、副交感神経はリラックス時に優位になります。ガムを噛むことで、このバランスが整い、心身のリラックス状態が促されます。
  • 注意の集中力向上: ガムを噛むことで、注意の集中力が高まるという研究結果もあります。これは、ガムを噛むという単純な動作が、脳のリソースをある程度占有することで、余計なことを考えにくくなり、タスクに集中できるようになるためと考えられています。

脳科学:脳のどの部分が活性化するのか?

ガムを噛むと、主に以下の脳の部位が活性化すると考えられています。

  • 前頭前野: 思考、判断、計画など、高次脳機能を司る部位です。ガムを噛むことで、この部位の活動が活発になり、注意力や集中力が高まる可能性があります。
  • 海馬: 記憶を司る部位です。特に、空間認識能力やエピソード記憶に関与しています。高齢者に対する研究では、ガムを噛むことで海馬の活動が活発になり、記憶力向上に繋がることが示唆されています。
  • 小脳: 運動機能を司る部位ですが、学習や認知機能にも関与しています。ガムを噛むという動作を通して、小脳も活性化されると考えられます。

「認知機能向上への影響

ガムを噛むことで、以下の認知機能が向上する可能性が期待されています。

  • 注意力、集中力: 前頭前野の活性化により、タスクへの集中力が高まり、より効率的に作業を行うことができるようになります。
  • 記憶力: 海馬の活性化により、特にエピソード記憶(過去の出来事の記憶)の定着が促進される可能性があります。
  • 学習能力: 新しいことを学ぶ際の効率が向上する可能性があります。
  • 反応速度: 刺激に対する反応速度が速くなる可能性があります。

注意点

  • ガムを噛みすぎると、顎関節症の原因となる可能性があります。
  • 糖尿病や虫歯など、歯科疾患のある方は、ガムの種類を選ぶ際に注意が必要です。

さいごに

ガムを噛みながら歩くことは、運動効果を高めるだけでなく、心身のリフレッシュにもつながる可能性のある有効な手段です。しかし、個人の体質や健康状態によって効果は異なります。

エビデンスの出典

免責事項

この記事は、一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスではありません。ご自身の健康に関するご心配事がある場合は、必ず医師にご相談ください。

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