痒みはなぜ我慢できないの?痛みより耐えられない理由を脳と神経の仕組みから解説
冬も只中の昨今、空気は乾燥しきって身体のあちこちが痒くなりボリボリという毎日を過ごしております。
で、先日ふと思ったのですが(そういえば痛み対して強い人はいるけど、痒みに強いという人にはであったことがないな?)
これは何だ?単に不快だからか?
いや、そういうことでもなさそうだなと思ったので、少し調べてみました。
ちょっとだけ、神経科学的な視点からわかりやすく解説します。
痒みと痛みはまったく別の感覚
さて、痒みと痛みは、同じ皮膚から生じる感覚ではあるのですが、どうも脳の中ではまったく別の感覚として処理されているようです。
痛みは「侵害刺激」と呼ばれ、組織が壊れそうなときに発生する警告信号です。
一方、痒みは「異物刺激」として扱われ、皮膚に付着した異物や炎症を排除するための信号であり、一見似ているようですが、それぞれの役割が違うため、脳の反応も異なるのですね。
痛みは我慢できるが、痒みは我慢できない理由
さて、痛みは大脳で処理されます。
大脳は、感じた刺激を「どれくらい危険か」「今すぐ避けるべきか」「まだ耐えられる範囲か」と判断する司令塔の役割を持っています。
なので痛みは「危険だけど大丈夫」「まだ我慢できる範囲」「まだ耐えられる」といった認知的な判断ができるのですね。
そして、この働きによって人は痛みに対し、ある程度の耐性を身につけることができるわけです。
一方で痒みは、脊髄反射に近い形で処理されます。
つまり「考える前に体が反応する感覚」であり、この構造の違いが、我慢の有無を分けているのです。
痒みは脳からの「今すぐ掻け」という命令
脳は痒みを感じると「そこに異物がある」「皮膚に問題が起きている」と判断し、排除を指示します。
その際に人が咄嗟にできる方法が”掻く”という行動なのですね。
ですから、脳は痒みを検知すると、痛みと違い様子見などせず「今すぐ掻け」という命令を下すわけです。
ようするに、痒みは警告ではなく、行動命令なのです。
掻くと気持ちよくなる脳の仕組み
痒みが厄介である理由の一つが、掻くと一瞬気持ちよくなるという点にあります。
掻く行為によって脳内でドーパミンが分泌され、一時的な快感が生まれます。
このあとは想像できますね。
痒い→掻く→気持ちいい→もっと掻くという、最悪の「痒いところカキカキの中毒ループ」が生まれるわけです。
進化が作った最優先アラートとしての痒み
人がウッホホいってた遥か太古の昔から、痒みは非常に重要な感覚でした。
寄生虫や毒のある虫、他にも皮膚感染等々、これらを放置するとは医療の概念すらない人類にとって、命に関わります。
必然的に人間の体は、進化の歴史の中で「痒みは最優先で処理する」という選択をし、他の行動を止めてでも、掻くことが最優先になるという今の身体が出来上がったのです。
なぜ「痒みに強い人」は存在しないのか
痒みに強い人は、ほとんど存在しないと言われています。
「痛みに強い」という感覚は、慣れや訓練によって培われますが、先にも述べたように「痒み」は、反射レベルで排除命令を出され、またその過程で報酬系と結びついているので、見逃すということが出来ないのです。
もし、あなたの周りに「私は痒くならない」という人がいる場合は、神経の感度が低下いるなどの、問題が発生している可能性があるかもしれません。
掻くほど悪化する痒みの悪循環
実は、痒みの悪循環は、痒い→掻く→気持ちいい→もっと掻くだけに留まりません。
掻く→皮膚が傷つく→ヒスタミンが分泌される→さらに痒くなるという、掻くことで悪化するという、非常に嫌な悪循環も並行して巡ります。
特に乾燥肌やアトピー性皮膚炎では、このループが慢性化しやすくなるので、痒いだけだと侮らず、早めの医療機関への受診をしてください。
最後に
痒みが我慢できないのは、長い進化の過程で作られた、人間の防衛システムだからです。
痛みは警告ですが、痒みは命令であり、この違いが「痛みに強い人がいるのに、痒みに強い人がいない」最大の理由です。
かゆみは気合や根性でどうにかするものではなく、つとめて冷静に医学で対応するのが、一番の対処法です。
