日本における不眠がもたらす社会損失とは?

「よく眠れていますか?」幸い私は「眠る」という事に関して苦労をしたことがないのですが、現代社会において不眠や睡眠不足はかなり深刻な問題になっています。というのも不眠や睡眠不足が個人の生活に悪影響を与えることは広く知られているのですが、その影響が社会全体に及ぶとなると案外気付かれていないようです。

じつは、日本社会において不眠がもたらす社会損失は、経済、医療、労働、精神的健康にまで広がっており、その総額は年間で数兆円にも達しています。そんな不眠による損失についてお話しますね。

1. 労働生産性の低下と経済損失

日本の睡眠不足が労働生産性の低下に大きく与える影響としては厚生労働省の調査によると、日本の成人の約20%が慢性的な不眠症に悩んでいるとあり、これが仕事の効率を下げる一因になっています。

例えば、2017年のRAND Corporationの報告によると、日本は不眠による生産性低下で年間約15兆円(GDPの2.92%)の損失を被っているとのことです。これは、欠勤や「プレゼンティーイズム」(出勤しているが十分に働けていない状態)が原因となっているとされてますが、まずこの「プレゼンティーイズム」なんて言葉を初めて知りました。

ふくやま

プレゼンティーイズムとは欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。 例えば、仕事を休むほどではないけど、花粉症や腰痛、頭痛などを感じ、仕事に集中できない状態を指すんですって。

2. 医療費の増大

不眠は当然健康にも大きな影響を与え、医療費の増大を招きます。睡眠不足は、心血管疾患や糖尿病、うつ病などの慢性疾患のリスクを高めることが多くの研究で示されています。厚生労働省のデータによれば、不眠症や関連する健康問題に対する医療費は年間数千億円に達し、今後も増加する見通しです。

不眠は自律神経に悪影響を与え、交感神経が過剰に働くことで高血圧や心臓病のリスクが増えることが指摘されています。これにより医療費の増大が社会にとって大きな負担となっています。

3. 交通事故や労災事故の増加

睡眠不足は、反応時間の遅れや判断力の低下を引き起こし、交通事故や労災事故のリスクも増大させます。特に日本では、長時間労働や過労が原因で十分な睡眠が取れないことが多く、これが事故発生の要因となっています。

内閣府の報告によると、睡眠不足による交通事故は年間数千件に上り、その中には重大な死傷事故も含まれます。また、労災事故のリスクも同様に高まり、企業にとっても経済的負担となっているそうです。

実は私が二十歳くらいの頃に24時間の現場でぶっ通し働いたことがあるのですが(今では考えられませんが)、車で帰宅する際に自宅付近までほとんど記憶がありませんでした。奇跡的に重大事故に繋がらなかったのですが、これ以降運転中に眠くなったら一旦車を止めて仮眠をとるようにしていました。

4. 精神的健康への影響と社会的コスト

不眠は、うつ病や不安障害などの精神的健康問題を引き起こすリスクを高めます。日本では、過労やストレスによる精神的な問題が増加してるのですが、不眠がその一因をしっかりと担っているんですね。現社会における精神的健康問題に関連する医療費や社会的なサポートコストは年間で数兆円に上るとされていますが、今後も増えはしても減ることはないでしょう。それだけ現代人は精神や脳への緊張を強いられています。

不眠はセロトニンやドーパミンなどの脳内物質のバランスを乱し、これが精神的な健康状態に悪影響を与えることもわかっています。このような影響は個人だけでなく、家族や職場など広範囲にわたる社会的問題を引き起こします。

ふくやま

不眠や精神的な問題は骨折などと違い明確に目に見えるものではないので周りの理解も必要ですね。

5. 企業への経済的負担

不眠による影響は企業にも直接的な影響があります。従業員が不眠により健康問題を抱えると、欠勤が増加し、新たな人材の採用や訓練にコストがかかります。また、労災事故による賠償金や保険料の増加も企業の負担となり、競争力の低下を招く可能性があります。

最近では、従業員の睡眠改善プログラムを導入する企業も増えているようです。これにより、生産性を向上させ、医療コストを削減することが期待されていますが、不眠の原因にはスマホなどもあるので、個人的には数時間でもデジタルデトックスの推奨する企業があっても良いんじゃないかと思います。

ふくやま

例えば、出勤時にスマホを預けて午前中だけスマホを触らないとか。


さいごに

不眠が日本社会にもたらす損失は非常に大きく、その影響は個人に留まらず経済や医療、精神的健康、企業活動にまで広がっています。社会全体での睡眠に対する重要性の理解やそれに対応する実際の対応がなければ、この問題の解決は望めないかと思います。

たかが不眠されど不眠です。睡眠はただの「休息」ではなく、私たちの健康と社会全体の持続可能性に欠かせない要素です。

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