大人になっても気が短い人の心理と特徴:学術的な視点からの深掘り

あなたの周りにいい大人なのにやたら気が短い人っていませんか?会社や家族・親戚、友人関係などの中に何故か一人くらいいますよね?私はそっとその人から離れることにしていますが、どうしても離れがたい関係性というのもあるので困ったものです。

さて、大人になっても短気である人々の心理と行動の背景には、複雑な要因が絡み合っていて、心理学、精神医学、神経科学など様々な視点から、その特徴や原因を探ることが、短気な人の行動の理解と対処において重要になってきます。ただ「あいつ嫌だな」で終わらせず、一旦その特徴と心理を整理して理解してみましょう。

1. 気が短い人の一般的な特徴

短気な人には以下のような共通した特徴が見られます。

  • 短気な言動: 些細なことで感情的になり、怒りやすい傾向があり、言葉遣いが荒くなることがあります。
  • 不耐性: 物事が思い通りに進まないとフラストレーションを感じやすく、待つことが苦手です。
  • 衝動性: 深く考えずに衝動的に行動してしまい、結果を予測する前に行動に移してしまうことがあります。
  • 攻撃性: 言葉や態度で他人を攻撃したり、物を壊したりするなど、感情が爆発することがあります。
  • 集中力の欠如: 一つのことに集中するのが難しく、容易に他のことに気を取られがちです。

2. 気が短い人の心理とその要因

通常なら成長過程である程度コントロールが出来るはずの感情の制御が上手くいかずに、大人になっても短気な性格が残る人が一定数いるのは何故なのでしょうか?

a. 心理学的視点

心理学的には、気が短い傾向には自己制御の未熟さが大きく関与しています。自己制御は幼少期から発達する能力であり、感情のコントロールや衝動の抑制がこの過程で成熟します。しかし、幼少期における適切な感情調整の訓練が不十分であったり、ストレスに適応するためのスキルが身につかなかった場合、自己制御が未発達のまま大人になることがあります。

特に、幼少期のトラウマや逆境的な環境で育った場合、怒りやストレスを適切に処理するスキルが欠如し、過剰に反応しやすい性格が形成されることがあるそうです。さらに、自己効力感が低い人は、自分の状況をコントロールできないと感じやすく、フラストレーションを強く感じるため、短気な行動を取りがちです。

ふくやま

自己効力感とは、ある状況において、自分が必要な行動をうまく遂行できると確信すること、つまり「自分ならできる!」という自信のことです。

b. 精神医学的視点

精神医学の観点からは、短気な行動はしばしばいくつかの精神疾患と関連しているという見解があります。以下はその代表的な例です。

  • 注意欠如・多動症(ADHD): 成人期におけるADHD患者は、衝動性が高く、衝動的な行動を取りがちなため、短気な性格が顕著です。脳の前頭前皮質の機能低下が、衝動のコントロールを難しくしていると考えられています。
  • 双極性障害(Bipolar Disorder): 双極性障害では、躁状態や軽躁状態の際に短気な行動が目立つことがあります。これらのエピソードでは、気分の高揚とともに刺激に対する耐性が低下し、怒りが爆発しやすくなります。
  • 不安障害(Anxiety Disorder)やうつ病(Depression): 不安障害やうつ病も、短気な行動と関連しています。これらの疾患では、日常的に緊張感やフラストレーションを感じやすいので、些細な出来事に過剰に反応することがあります。
かっぱ子

脳の前頭前皮質って何さ?

ふくやま

前頭前皮質は脳の司令塔と呼ばれていて、私たちの脳の中でも特に重要な部分で、計画を立てたり、判断をしたり、問題を解決したりするといった、人間らしい高度な思考を司っています。

かっぱ子

ふーん

ふくやま

もし、この部分がうまく働かなくなると、衝動的になる・集中できない・感情のコントロールが難しくなる・人と上手く関われない、などの問題が起こる可能性があります。

c. 神経科学的視点

神経科学の観点では、短気な人の脳機能には、扁桃体と前頭前皮質の相互作用が大きく関与しています。扁桃体は、感情の処理、特に恐怖や怒りといった負の感情に関わる領域です。一方、前頭前皮質は理性的な判断を司り、感情の抑制に寄与します。

短気な人の場合、扁桃体の過活動と前頭前皮質の抑制機能の低下が見られることがあり、感情のコントロールが難しくなることがあります。また、神経伝達物質であるドーパミンとセロトニンのバランスも重要です。ドーパミンの過剰な活性は衝動的な行動を促進し、セロトニンの不足は感情の安定性を損ない、攻撃性を増加させることがあります。

d. 社会的・環境的要因

短気な性格は、個人の内的要因だけでなく、外部環境や社会的要因にも影響されます。例えば、慢性的なストレスにさらされている場合、脳は常に「戦うか逃げるか(fight-or-flight)」の状態にあり、些細な出来事でも攻撃的な反応が引き起こされやすくなります。家庭環境で短気な行動がモデルとして示されていた場合、その行動が学習され、大人になってもその行動パターンが続く可能性があります。

3. 気が短い人への対処法

大人になっても短気な性格が残る場合、適切な対処法を講じることが重要です。以下にいくつかの有効な対処法を挙げます。

  • 心理療法: 認知行動療法(CBT)やマインドフルネス療法など、感情の調整や自己制御を学ぶためのセラピーが有効です。特に、トラウマに基づく短気な行動に対しては、トラウマフォーカス療法が推奨されます。
  • 薬物療法: 必要に応じて、抗うつ薬や抗不安薬、衝動性を抑えるための薬物療法が考慮されます。例えば、ADHD患者にはメチルフェニデートやアンフェタミンなどの薬物が用いられます。
  • ストレス管理: 日常的なストレス管理も重要です。リラクゼーション技術や適度な運動は、神経伝達物質のバランスを整え、衝動的な行動を抑える助けとなります。

またかと思うでしょうが、適度な運動は脳機能のバランスを保つのに有効な手段ですので、短気な人は自分が楽しいと思う運動をしてみるのも有効な手段ですよ。

まとめ

実際、短気な人が一人いるだけでコミュニティー全体に影響を及ぼすので、個人的には勘弁してくれとは思うのですが、大人になっても気が短い人の心理や行動は、心理学的、精神医学的、神経科学的要因が複雑に絡み合った結果として現れます。

自己制御の未熟さ、脳機能のバランスの乱れ、精神疾患の影響、そして社会的・環境的要因が、短気な行動に繋がる可能性があります。これらを理解していると、ああそういう事か~と何となく納得できるかと思いますし、何とかしようと本腰をあげるなら、効果的な介入や治療の可能となります

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