気圧の変化や寒さで古傷が痛む原因について

寒くなると何故古い傷が痛むのですか?という質問をうけました。

私自身、生来の運動神経の鈍さから無駄な怪我が多く、体のあちこちに古傷があるので、とても共感できる質問でした。実際、古傷の痛みを経験したことがある人はかなり多いのではと思い、改めて調べてみるといくつかの理由があるようです。

原因

1血流の変化

寒くなると体は温かさを保つために血管を収縮させます。これにより、皮膚や末梢(まっしょう、体の端の部分)の血流が減少します。しかし、古い傷跡には※瘢痕(はんこん)組織があり、これは通常の組織とは異なる血流パターンを持っています。寒さで血流が減少すると、瘢痕組織の酸素や栄養供給が一時的に悪くなり、痛みが生じることがあります。

神経の過敏反応

古い傷跡にはしばしば神経の過敏反応が見られます。これは、傷が治る過程で神経が再生される際に、正常とは異なる形で再生されることが原因です。寒さは神経を刺激しやすく、特に過敏になっている神経は痛みを感じやすくなります。

関節の硬直

関節の近くにある古い傷は、寒くなると関節が硬くなりやすく、これが痛みを引き起こす原因となります。寒さによって関節液が粘性(ねんせい、液体の流れにくさ)を増し、関節の動きが滑らかでなくなるためです。特に関節周辺の瘢痕組織が影響を受けると、痛みが増します。

気圧の変化

寒くなると気圧も変化することがあります。特に天気が悪くなると気圧が下がり、これが古い傷の痛みを引き起こす一因と考えられています。気圧の変化により、瘢痕組織内の圧力が変わり、それが神経を刺激して痛みを感じるのです。

炎症の再活性化

寒さによって免疫反応が変化することがあります。どうやら古い傷跡には微小な炎症が残っている場合があり、寒さでこれが再活性化を引き起こします。このような要因で、痛みや不快感が生じるのです。

メカニズム

a. 毛細血管と瘢痕組織

瘢痕組織は、通常の組織よりもコラーゲンが多く含まれており、硬くて柔軟性が少ないという特徴を持っています。瘢痕組織には新しく形成された毛細血管が豊富に存在し、これが寒さによって収縮すると酸素供給が不足し、痛みを感じやすくなります。

b. ヒスタミンと炎症反応

瘢痕組織には肥満細胞(ひまんさいぼう)が多く存在し、これが寒さや圧力の変化に反応してヒスタミンを放出します。ヒスタミンは血管を拡張させる一方で、末梢神経(まっしょうしんけい)を刺激して痛みやかゆみを引き起こします。特に、古い傷にはこれらの反応が過敏に働くことがあります。

c. 神経の変性と再生

傷が治る過程で神経も再生されますが、この再生過程で神経が異常に敏感になることがあります。これを「神経の過敏性」と呼びます。寒さによってこの過敏性が増すことで、古い傷が痛むのです。

d. 関節液の粘性

寒くなると関節液が粘性を増し、関節の動きが滑らかでなくなることがあります。関節周辺の古い傷は、関節の硬直によって引き起こされる痛みを感じやすくなります。

e. 気圧の影響

気圧が低下すると、体内の圧力も変化し、特に瘢痕組織内の圧力が変わります。これが神経を刺激し、痛みを感じる原因となります。

対処法

  • 保温: 傷跡を温かく保つことで、血流を維持し、痛みを和らげることができます。温かい服装やホットパックを使用しましょう。
  • 適度な運動: 軽い運動をすることで、血流を促進し、関節の硬直を防ぐことができます。
  • マッサージ: 傷跡を軽くマッサージすることで、血流を良くし、痛みを和らげることができます。(もちろん整体もその内に入りますので当院の施術もご検討の候補にお入れください)
  • ヒスタミンの抑制: ヒスタミンの放出を抑えるために、抗ヒスタミン薬を使用することもあります。これは医師の指導のもとで行ってください。
  • 痛み止めの使用: 痛みがひどい場合は、市販の痛み止めを使用することも有効です。

寒くなると古い傷が痛む原因には、血流の変化、神経の過敏反応、関節の硬直、気圧の変化、炎症の再活性化などが関与しています。これらのメカニズムを理解することで、適切な対処法を見つけ、痛みを和らげることができます。古い傷の痛みは個人差がありますが、自分に合った方法を見つけて、寒い季節を快適に過ごしましょう

※瘢痕組織(はんこんそしき)とは、傷が治る過程でできる新しい組織のことです。通常の皮膚とは違い、コラーゲンという繊維がたくさん含まれており、硬くて柔軟性が少ないです。瘢痕組織は、傷を修復するために体が作り出すもので、見た目は色が違ったり、凸凹していたりします。簡単に言うと、瘢痕組織は体が傷を治すために作る「修理パッチ」のようなものです。

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