HSPと緊張の関係

まず、HSPの人々は、他者が気づかない細かな環境変化や感情の波動を感じ取りやすく、そのため過度のストレスや緊張を感じることが多いです。

それは特有の過敏な神経システムが原因と考えられており、通常の人にとって問題ない刺激でも、HSPの人にはとても強い刺激に感じられ、身体的・精神的な緊張を引き起こします。

1. 社会的な場面での緊張

HSPの人は、他者の感情や反応に敏感に反応します。たとえば、会議やプレゼンテーションの場で、自分が注目を浴びると、その場の全員の視線や雰囲気に圧倒され、強い緊張を感じることがあります。

これは良くも悪くも、失敗してはいけないという感情からくる完璧主義の一面が、他者が自分をどう評価するかを過度に気にするため、緊張が増幅されやすいからです。

例えば、当院のお客様であるAという女性は、職場の会議で自分の番が来た時に、周囲の反応に対して敏感すぎて言葉が出なくなり、強い緊張感から手が震えてしまった経験があるそうです。この時の切っ掛けは、同席していた先輩の中の一人が、自分の爪を見て退屈そうにしていたのを、立ち上がった際に気付いてしまったからでした。

このように、他者の評価や周囲の雰囲気が彼女にとって非常に大きなストレスとなり、緊張を引き起こしているのです。

2. 感覚的な過刺激による緊張

HSPの人々は、感覚的な刺激に対しても過敏です。たとえば、明るい照明や大きな音、人混みの中などで、これらの刺激が過剰に感じられ、緊張感が高まることがあります。これは、外部からの刺激が神経系に過剰な負担をかけ、身体が緊張反応を起こすためです。私自身も若い頃にあったバンドブームの際、友人に誘われ渋谷のライブハウスに行ったことがありますが、ただただ居心地が悪いだけでした。

例えば、男性のお客様が人混みの多いイベントに参加した際、周囲の騒音や光に圧倒され、強い緊張を感じた結果、頭痛や吐き気を伴うことがあったそうです。この時の気温なども健康を阻害した可能性はあるのですが、このように、感覚的な過刺激はHSPの人々にとって非常にストレスフルであり、緊張を誘発する要因となります。

学術的視点から見るHSPと緊張

HSPの人々が緊張しやすい理由を理解するためには、神経系の反応を考慮する必要があります。研究によると、HSPの人々は、通常の人々よりも扁桃体(脳の感情を司る部分)が活発に反応することが示されています。

扁桃体(へんとうたい、 Amygdala)は、ヒトを含む高等脊椎動物の側頭葉内側の奥に存在する[1]、アーモンド(扁桃)形の神経細胞の集まり。情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つことが示されており、大脳辺縁系の一部であると考えられている[2]。 扁桃核(へんとうかく)とも言う。偏桃体wiki

また、HSPの人々は副交感神経系と交感神経系のバランスが乱れやすく、特に交感神経系が優位になりやすい傾向にあります。これにより、常に戦闘モード(いわゆる「闘争か逃走か」の反応)が強く働き、身体が緊張状態に陥りやすくなるのです

緊張に対する対策

HSPの人々が緊張に対処するためには、以下の方法が有効とされています。

  1. 環境を調整する:自分が過剰に刺激を受ける環境を避けることが重要です。たとえば、静かな場所で休息をとる、明るさや音量を調整するなど、感覚的な負担を軽減する方法を取ることが推奨されます。
  2. 呼吸法やリラクゼーション法:深呼吸や瞑想、筋弛緩法など、神経系をリラックスさせる技術を習得することも効果的です。これにより、過敏な神経系を鎮め、緊張を和らげることができます。
  3. 自分自身を理解する:HSPとしての自分を理解し、自己肯定感を高めることが緊張を減らす助けになります。自分の敏感さを否定するのではなく、それを受け入れ、上手に対処する方法を見つけることが大切です。

まとめ

HSPの人々が緊張しやすい理由は、その過敏な神経システムと感情的・感覚的な過刺激に対する反応にあります。扁桃体や自律神経の働きが影響しており、環境や状況によっては強い緊張を感じやすくなるのです。しかし、適切な対処法を身につけることで、緊張を和らげ、より快適な生活を送ることが可能です。

【参考文献】
※1: Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345-368.
※2: Benham, G. (2006). Stress, coping, and health: The mediating roles of personality and social support. Journal of Health Psychology, 11(5), 727-735.

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